白色の被毛のワンちゃんに特に目立ちやすい「涙やけ」。
涙やけとは、流れ出た涙が被毛に浸透することで色素沈着を起こし、被毛が赤茶色に変色してしまう症状で、「流涙症」とも言われています。
涙やけは、白色の被毛の犬に限った症状ではなく、どんな色のワンちゃんでもなる場合があります。
涙の成分が変性した時に、白色(淡い色)であれば簡単に被毛を染めることができるため、涙やけが特に目立ちやすく、白色の被毛のワンちゃんに多いという印象が根付いてしまうのです。
犬の涙の成分は、大まかに分けると3つに分類されます。
水分 | 涙の主成分は水分で、上まぶたの裏側の涙腺から分泌されます。タンパク質などの成分が含まれており、角膜の保護や栄養補給などを担う重要な役割があります。 |
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ムチン | 粘液性の分泌型ムチンは、目の表面にある「ゴブレット細胞」から分泌され、涙が目の表面を均一に分散する役割があり、涙の安定性を保つのに欠かせない成分です。 |
油分 | まぶたの端部にあるマイボーム腺から分泌される油の層が、外側を覆うことによって涙の蒸発を防ぎます。この油分の分泌量が減少してしたり、正常に排出されなくなると「ドライアイ」を引き起こす要因となります。 |
主成分の95%が水分である涙は、涙そのものに変色させる機能はなく、先天的な要因や外部的な刺激により、涙の変色を起こしてしまうのです。
涙やけは、「涙の分泌物の化学変化」「紫外線による変色」「雑菌(バクテリア)による変色」が主な原因となります。
涙やけを引き起こす原因は、個体によって様々ですが大きく分けると「先天的な要因」と「外部的な刺激」の2つがあります。
通常、余分な涙は目頭にある穴(涙点)で吸収された後、鼻涙管を通って鼻から排出されます。
人間でも、泣くと鼻水が止まらなくなりますよね。これは、泣くと余分な涙がたくさん出てしまうため、鼻涙管を通して鼻から排出しているからです。
この涙管が先天的な原因(遺伝など)によって詰まっていると、鼻から涙を正常に排出できないため、目から溢れ出てしまいます。
そのため、一定量以上の涙が目から出てしまい、常に被毛が濡れた状態になることで、雑菌が繁殖しやすくなり、涙やけを引き起こしてしまうのです。
涙やけは、小型犬や鼻が短い犬種、目が大きい犬によく見られる症状で、以下の犬種がなりやすいと言われています。
マルチーズ、チワワ、ポメラニアン、ビションフリーゼ、トイプードル、シーズー、ヨークシャーテリア、フレンチブルドッグ、ボストンテリアなど
私の愛犬ぬっち(ビションフリーゼ)は、獣医師によると流涙管は正常で、単純に涙の量が多いことと目が大きいことが涙やけの要因のひとつと診断されました。
鼻涙管が詰まっている場合、鼻から排出するはずの涙が目から溢れ出ているため、鼻は乾き気味になってしまうのです。
私の愛犬は、いつも目も鼻もビショビショで、目がクリッとして大きめなため、単純に涙の分泌量が多すぎるということになります。
この場合、「ひたすら涙を拭き取ること」と「良質なフードによって涙の質を改善するしかない」と言われました。
何らかのアレルギーが原因となり、涙やけを引き起こしている場合もあります。
もし、アレルギーが原因による涙やけであれば、アレルギー検査(アレルゲン特異的IgE検査)を受けることで、改善策が見つかるかもしれません。
アレルゲンとなる成分は様々で、ハウスダストやダニ、特定の食物などと個体によって異なります。
特に、食物アレルギーに関しては、何年もずっと同じフード(同じアレルゲンとなる原材料)を食べ続けることで、突然発症するケースもあります。
「フードローテーション」という言葉がありますが、これは、定期的にアレルゲンになりやすい主原料を変えることで食物アレルギーを防止する効果があります。
アレルゲンとなりやすい食材
牛肉、豚肉、大豆、トウモロコシ、小麦、乳製品など
涙が溢れ出ている目元は常に湿った状態となり、雑菌が繁殖しやすい環境となってしまいます。
目の周りだけでなく、手足や口周り、肛門周りをペロペロ舐めるクセのあるワンちゃんは、舐めた部分が唾液により湿った環境を作ってしまい変色を引き起こします。
前足を舐めるクセがあるワンちゃんは「指間炎」になりやすく、過剰に舐めることで指の間が湿った状態になり、炎症を起こす原因のひとつとなります。
湿った状態のままが続くと、雑菌が繁殖し衛生的にも好ましくないため、できる限り拭き取ってあげることが重要です。
「目にゴミが入ってる」「結膜炎などの症状がある」「逆さまつげ」「被毛が目に被さっている(長毛種の場合)」など外部的に刺激を与え続けることで、涙の分泌量が過剰になっている可能性があります。
人間でも、目にゴミやまつげが入っていると、痛みを感じて涙の量が増えますよね。これは、ワンちゃんも同様で、できるだけ目に外部的な刺激がないように気をつけましょう。
涙には、「ラクトフェリン」というタンパク質が含まれており、このラクトフェリンは外気中の鉄イオンと結合します。
そこに、紫外線を浴びしてしまうことで、涙の成分が変性し赤茶色に変色してしまいます。
塗料や衣類、車のヘッドライトなども紫外線によって変色を起こします。
かと言って、犬に日焼け止めを使うことはできないので、「なるべく日が照っている時間のお散歩を避ける」のもひとつの改善策かもしれません。
「ドッグフードを変えたら、涙やけが良くなった(悪化した)」という話はよく聞きますよね。
私の愛犬も、かかりつけの獣医師に「まずはフードをよく見直してみて」と言われました。
ドッグフードには、人間の食べ物に含まれていないような保存料や人工添加物が含まれていることが多く、粗悪な添加物を毎日食べ続けることで、体内に蓄積し悪影響を及ぼします。
トウモロコシなどの穀物や肉副産物(死んだ動物の肉など)は、安価な価格で大量に仕入れることができるため、「カサ増し」として使用されていることはよく知られています。
また、保存料によって日持ちをよくさせたり、食いつきを良くするために香料を使用したりと、人間基準では考えられないほどの添加物が含まれている場合があります。
これらの添加物が涙やけや皮膚トラブルなどの症状を引き起こす原因のひとつとなるため、添加物入りのドッグフードを与えている場合は見直しが必要です。
最近では、添加物や粗悪な原材料を含まず、人間も食べることができる「ヒューマングレード」の良質なドッグフードが続々と開発されています。
涙やけを改善するためには、どんなドッグフードが良いのか?という疑問がありますよね。
「とりあえず国産だから」「有名なブランドだから」だけの判断はやめましょう。
犬は、本来「肉食に近い雑食」なので、安価なドッグフードの主原料に多く使われている穀物(トウモロコシなど)は、炭水化物を分解する「アミラーゼ」という消化酵素が極端に少ないため、人間ほどうまく消化できません。
そのため、穀物よりもお肉などの動物性タンパク質をメインとしたドッグフードの方が栄養を吸収しやすく、犬には適しているのです。
ドッグフードの原材料表記は、使用量の多い原材料から順番に記載されているので、お肉が一番最初に表記されているドッグフードを選びましょう。
ただし、同じ穀物でも使用する穀物の種類や製造方法によっても消化吸収の比率が異なります。
「どんな種類の穀物を使っていて、どんな方法で作られたか」ということが大切ですので、穀物が含まれているからと言ってダメというわけではないのです。
粗悪な添加物を排除することで、消化吸収が正常に行われ腸内環境が改善されることが、涙やけの改善にもつながります。
また、手作り食に変えて涙やけが改善したという事例も多くあります。
新鮮なお肉が主原料で、添加物などの粗悪な成分が入っていないドッグフードが望ましいです。特定の食物アレルギーがある場合は、アレルゲンが含まれていない原材料のものを選びましょう。
・添加物や保存料が不使用
・お肉(動物性たんぱく質)が主原料
・腸内環境を整える成分が含まれている(乳酸菌、納豆菌など)
・ビタミン・ミネラルが豊富
私の愛犬ぬっちは、ロイヤルカナン(セレクトスキンケア)で爆発的に涙やけが悪化しました。
よくよく見てみると、「ソルビン酸カリウム」「BHA」「没食子酸プロピル」などの添加物が含まれていました。
ドッグフードの粒も油っぽく(手で触るとベタベタする)、ぬっちには合わなかったです。
雑菌の繁殖を防ぐためには、湿った環境を放っておかないことが重要です。
とにかくこまめに丁寧に拭き取ってあげることで、涙やけの悪化は絶対に防げます。
涙やけケア用のスプレーやシートも多く市販されているので、これらを利用するのもおすすめです。
目の周りを拭くときは、押し付けずに優しく丁寧に拭き取ってあげましょう。顔を触られるのが嫌いなワンちゃんもいますので、徐々に慣らしていくことが大切です。
最近では、涙やけ予防のサプリメントや涙やけケア用品が多く市販されており、これらを利用している飼い主さんも増えてきています。
涙やけ予防にサプリメントを利用する場合は、乳酸菌や酵素が含まれているものがおすすめです。
乳酸菌には腸内環境を整える効果があり、涙やけの改善にも期待できると言われています。
アメリカの獣医師の間では、お水に「アップルサイダービネガーを小さじ一杯」入れると、涙やけの改善に期待できると言われています。
日本では、あまり知られていない方法ですが、ペット先進国のアメリカやイギリスでは良く耳にする改善方法のひとつです。
涙やけを英語で「Tear Stains」と言います。「How to Remove Tear Stains(涙やけの改善方法)」などと検索すると、様々な資料を読むことができるので、気になる方はぜひ調べてみてください。
被毛が目に入りやすい長毛種のワンちゃんであれば、こまめに目の周りをカットしてあげてください。
ワンちゃんが過ごす室内に空気清浄機を設置したり、こまめに掃除・換気をするなど、清潔な環境作りが大切です。
ペット専用運転モードが搭載されており、スマートフォンアプリと連動もできます。外部から脱臭強化や湿度調整などもできるので、外出中でも安心です。
また、涙やけの変色を防ぐために「紫外線の少ない時間帯にお散歩に行く」などといった工夫も良いかもしれません。 適度な運動身体を動かすことは、ストレス解消やあらゆる病気の予防につながり、健康的な体形の維持を促します。人間と同じように運動不足は、体力や筋力の低下、肥満、ストレスなどと、健康面・精神面ともに悪影響を及ぼします。ストレスは万病のもとですので、毎日の運動が大切です。私が聞いた「○○したら涙やけが治ったよ!」エピソード実際に、私が友人やご近所の犬友さんに聞いた涙やけが治ったエピソードを紹介します。・おやつを一切やめたら涙やけが治った!
(友人のスムースチワワ)・ペットクールで拭きまくったら涙やけが治った!
(ご近所の白色のトイプードル)・ドッグフードをカナガンにしたら涙やけがマシになった!
(友人の白色のトイプードル)・ドッグフードをアボ・ダームにしたら涙やけがマシになった!
(友人のアプリコット色のトイプードル)・アレルギー検査を受けて、アレルゲン(牛肉)を除いたら涙やけが治った!
(ご近所のポメラニアン)・外科手術(涙点を開ける)を受けて涙やけが治った!
(ご近所のビションフリーゼ)フードが関係している例が多いですが、それぞれ体質や環境が異なるので、「このドッグフードを与えれば涙やけが治る」というものはありません。まずは、気になるドッグフードの原材料の安全性をチェックして、問題なさそうであればサンプルを取り寄せて、食いつきが良ければ購入し継続することをおすすめします。
帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科にて行われた涙やけに関する実験において、原材料に乳酸菌やオリゴ糖などの腸内環境を整える作用のある成分が配合されていると、涙やけの改善に効果があったことがわかりました。
実験内容の詳細は、こちらからご確認いただけます。
まとめ今回は、涙やけの原因と改善方法についてまとめました。涙やけによって一度変色した被毛は、元には戻らないのでカットして除去する必要があります。新たに伸びてきた被毛を変色させないためにも、日々のお手入れや環境作りが重要となります。